山田智和が作るあの有名なMVの秘密とは?【MdN 12月号】

こんにちは。11月に入り、段々と寒くなってきましたね。

こんな季節にはお家でゆっくり音楽を楽しんでみてはいかがでしょうか?

今回は、コワーキングスペース24においてある沢山の本の中から、2018年12月号『MdN -この曲はなぜこのアプローチで撮ったのか?映像監督8人に聞いたMV43曲-』という雑誌を紹介します。

実はこの雑誌、2019年に休刊になっているのです。1度読んでも読み返したくなるくらい素敵な雑誌なので、ぜひみなさんにも知ってほしいな、なんて思います。

数多くのヒット曲のMVを手掛ける映像作家、 “山田智和”

この雑誌では数多くの映像監督が特集されていますが、その中でも群を抜いてヒット曲のMVを手掛けてきた、山田智和さんにフォーカスしてご紹介します。

【山田智和】

1987年生まれ、日本大学芸術学部映像学科映像コース出身。アーティストのMVやブランド広告の監督から、ファッション誌での写真掲載からTVドラマまで、その活動は多岐に渡る。国連が主催する世界最大規模の国際コンテスト、New York Festival 2014 にて銀賞を受賞するなど、日本を代表する映像クリエイター。

「マリーゴールド/あいみょん」に込められた彼の”熱”

最近彼が手掛けた作品の中でも有名なMVの1つとして、2.6億回再生を誇るあいみょんの「マリーゴールド」があります。

このMVの秘密とは一体何なのか?もっとMVを楽しんで見るためのポイントをMdNより2つまとめました。

【1】対比の構造

マリーゴールドのMVでは部屋と屋外、雨と晴れ、明るい部屋と暗い部屋、撮影機材をデジタルとアナログで使い分けるなど、細かい対比がなされています。歌詞の登場人物も捉え方によって死んでいる人なのか、あるいは生きている人なのか。この爽やかな曲のイメージに潜む暗部と明部を、角度や色、シチュエーションの違いを通じて表現しているそうです。それぞれ歌詞とMVのシーンでどのような変化があるのか、それを探してみるのも面白いかもしれません。

【2】カメラの距離

被写体とカメラの距離が、他のMVにはあまりない近い距離で撮られていることもポイントです。これは被写体ならではの魅力や熱を引き出し、そこに山田さん自身の熱も衝動も落とし込むことで、一挙手一投足の仕草や自然体な関係性を映像を通して表現するためです。普段はカメラマンに撮影を頼むそうで、ここであえて自分が実際に撮影するという彼の姿勢に脱帽ですね。

「Lemon/米津玄師」に隠されたメッセージ

彼が手掛けたヒット曲の中に、あの有名な米津玄師の「Lemon」もあります。あの不思議な雰囲気のあるMVにはどのような秘密があるのでしょうか。

【1】1対1のスクエア画面

一般的なMVは横に広い16対9の画面ですが、それでは生理的な画像処理の影響で左から右に情報が流れてしまうことに彼は着目しました。あえてスクエアの1対1の画面にすることで登場人物と固定的な視座にならざるを得なくなるのです。またそこの前後に別の何かの存在を置くことで、見る側がレイヤー層と捉え存在感が強調されるという、何とも計算されたテクニックですね。

【2】ダンス

米津玄師の後ろにいる人たち、なぜダンスを踊っているのだろうと思いませんでしたか?これは彼が『ダンスはビジュアル的にも感情表現しやすく儀式や供養などでも用いられる一種の身体表現である』と考えたために使われました。多種多様な人物にそれを演じさせることで、世界平和を願うメッセージでもあるそうで、こんな深い意味が込められていたなんて驚きです。

山田智和の、想いと今後

山田智和は作品を作る上で、話題性やギミックのみで作るのではなく、10年後、20年後にも残るような主役としての映像を残していきたいと語っていました。これはクリエイター系の仕事全てにおいて、言えることではないかなと私は思います。個人的な経験から生まれるアイデアをいかに普遍的なものにして世界に発信していくのか。そこには流行だけに囚われない1人1人のこだわりを突き詰めて行く必要があります。彼の作品に対する姿勢を目標にしていきたいですね。